法人税基本通達の記述より・・・

保険契約の要素

・保険契約者・被保険者・保険金受取者・補償内容・積立型・掛捨型・保険期間

法人税基本通達

1. 退職共済掛金等の損金算入の時期

法人が支出する令第135条各号《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》に掲げる掛金、保険料、事業主掛金、信託金等又は預入金等の額は、現実に納付(中小企業退職金共済法第2条第5項に規定する特定業種退職金共済契約に係る掛金については共済手帳への退職金共済証紙のはり付け)又は払込みをしない場合には、未払金として損金の額に算入出来ない。

※注)独立行政法人勤労者退職金共済機構の退職金共済契約の場合も、その契約に係る被共済者には、その法人の役員で部長、支店長、工場長等で使用人としての職務を有す者が含まれる。

ポイント

損金算入の条件として、掛金の実際の払込みが必要です。現金主義基準です。年度末に共済契約を結んでも、年度末までに掛金を支払わない限り損金算入出来ません。また、役員であっても使用人兼務役員は損金算入の対象者です。

2. 社会保険料の損金算入の時期

法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することが出来る。

  1. 健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料
  2. 旧効力厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金

※注)同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することが出来る。

ポイント

社会保険料は、債務確定基準を準拠して、保険料等の額の計算の対象になった月の末日に納付義務が確定する性質のものであることから、納付の告知や実際の納付を待たずに損金算入出来ます。

3. 労働保険料の損金算入の時期等

法人が、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第15条《概算保険料の納付》の規定により納付する概算保険料の額又は同法第19条《確定保険料》の規定により納付し、又は充当若しくは還付を受ける確定保険料に係る過不足額の損金算入の時期等は次による。

  1. 概算保険料 概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額は当該概算保険料に係る同法第15条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第3項に規定する決定に係る金額については、その決定のあった日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。
  2. 確定保険料に係る不足額 概算保険料の額が確定保険料の額に満たない場合のその不足額で当該法人が負担すべき金額は、同法第19条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第4項に規定する決定に係る金額は、その決定の日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。但し、当該事業年度終了の日以前に終了した同法第2条第4項《定義》に規定する保険年度に係る確定保険料について生じた不足額のうち当該法人が負担すべき金額は、当該申告書の提出前であっても、これを未払金に計上出来る。
  3. 確定保険料に係る超過額 概算保険料の額が確定保険料の額を超える場合のその超える部分の金額のうち当該法人が負担した概算保険料の額は、同法第19条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第4項に規定する決定に係る金額については、その決定のあった日)の属する事業年度の益金の額に算入する。

ポイント

概算保険料と確定保険料の取扱いに注意
概算保険料⇒申告書を提出した日又は納付した日に損金算入
確定保険料⇒不足額は申告書を提出した日又は納付した日に損金算入
過納額は申告書を提出した日の益金に算入

4. 養老保険に係る保険料

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含むが、6に定める定期付養老保険を含まない。以下7までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第135条《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》の規定の適用があるものを除く。以下4において同じ。)を支払った場合は、その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)は、次の区分に応じ、それぞれ次により取り扱う。

  1. 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下5まで同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下4において同じ。)の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上する。
  2. 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
  3. 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

ポイント

保険金の種類は死亡保険金と満期保険金
死亡保険金⇒被保険者の死亡により支払が執行される
満期保険金⇒保険期間の満了により支払が執行される
支払った保険料が資産計上又は損金算入しますが、普遍的平等性を保たないと給与として所得税課税が生じます

5. 定期保険に係る保険料

法人が、自己を契約者とし役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含む。以下7までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払った場合は、その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)は、次の区分に応じ、それぞれ次により取り扱う。

  1. 死亡保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入する。
  2. 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

ポイント

一定期間に被保険者が死亡した場合に保険金が支払われるため、法人が支払った保険料は法人の損金にするか又は被保険者(役員又は使用人)に対する給与にするかの何れかです。役員又は使用人が死亡した場合には期間の経過に応じて原則損金算入しますが、普遍的平等性を保たないと給与として所得税課税が生じます。
なお、がん保険(終身保障タイプ)については、保険料の払込期間と保険期間がかい離することから、一定額を前払金として資産計上します。保険料の払込期間終了後は毎期資産計上額を一定額取崩します。

6-1. 定期付養老保険に係る保険料

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期付養老保険(養老保険に定期保険を付したものをいう。以下7まで同じ。)に加入してその保険料を支払った場合は、その支払った保険料の額(傷害特約等の特約に係る保険料の額を除く。)は、次の区分に応じ、それぞれ次により取り扱う。

  1. 当該保険料の額が生命保険証券等において養老保険に係る保険料の額と定期保険に係る保険料の額とに区分されている場合 それぞれの保険料の額について4又は5の例による。
  2. (1)以外の場合 その保険料の額について4の例による。

ポイント

保険料が定期保険に係る保険料と養老保険に係る保険料に区分している場合と区分していない場合とで取扱いが異なります。
原則として、定期保険に係る取扱いと養老保険に係る取扱いに準じています。

6-2. 傷害特約等に係る保険料

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする傷害特約等の特約を付した養老保険、定期保険又は定期付養老保険に加入し、当該特約に係る保険料を支払った場合は、その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入出来る。但し、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを傷害特約等に係る給付金の受取人としている場合は、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

ポイント

特約付生命保険でその傷害特約等に係る給付金の受取人が法人の場合には、法人の全従業員を対象にした生命保険に係る保険料は福利厚生費として期間の経過に応じて損金算入出来ますが、特定の役員等のみがその特約に係る給付金の受取人であっても、その支払った特約保険料は期間の経過に応じて損金の額に算入出来ます。

7-1. 保険契約の転換をした場合

法人がいわゆる契約転換制度によりその加入している養老保険又は定期付養老保険を他の養老保険、定期保険又は定期付養老保険(以下7において「転換後契約」という。)に転換した場合は、資産に計上している保険料の額(以下7において「資産計上額」という。)のうち、転換後契約の責任準備金に充当される部分の金額(以下7において「充当額」という。)を超える部分の金額をその転換をした日の属する事業年度の損金の額に算入出来る。この場合に、資産計上額のうち充当額に相当する部分の金額は、その転換のあった日に保険料の一時払いをしたものとして、転換後契約の内容に応じて4から6までの例による。

ポイント

養老保険には死亡保険金と生存保険金に対応する保険料の全額を資産計上しますが、その性格上貯蓄性のない危険保険料部分が含まれているため、養老保険を契約転換する場合には、危険保険料部分について精算することを認めています。

7-2. 払済保険へ変更した場合

法人が既に加入している生命保険をいわゆる払済保険に変更した場合には、原則として、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険料の額(以下7の2において「資産計上額」という。)との差額を、その変更した日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。但し、既に加入している生命保険の保険料の全額(傷害特約等に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りでない。

※注)

  1. 養老保険、終身保険及び年金保険(定期保険特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合に、本文の取扱いを適用せずに、既往の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上しているときはこれを認める。
  2. 本文の解約返戻金相当額については、その払済保険へ変更した時点において当該変更後の保険と同一内容の保険に加入して保険期間の全部の保険料を一時払いしたものとして、4から6までの例により処理するものとする。
  3. 払済保険が復旧された場合には、払済保険に変更した時点で益金の額又は損金の額に算入した金額を復旧した日の属する事業年度の損金の額又は益金の額に、また、払済保険に変更した後に損金の額に算入した金額は復旧した日の属する事業年度の益金の額に算入する。

ポイント

払済保険に転換するということは、既契約の途中で保険料が支払えなくなった場合に、保険料の払い込みを中止し、既払保険料に係る解約返戻金を利用して新たな契約に移行することを言います。保険契約の転換制度と同様の効果がもたらされます。

8. 契約者配当

法人が生命保険契約(適格退職年金契約に係るものを含む。)に基づいて支払を受ける契約者配当の額については、その通知(据置配当については、その積立てをした旨の通知)を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、当該生命保険契約が4の(1)に定める場合に該当する場合(6の(2)により4の(1)の例による場合を含む。)は、当該契約者配当の額を資産に計上している保険料の額から控除出来る。

※注)

  1. 契約者配当の額をもっていわゆる増加保険に係る保険料の額に充当することになっている場合には、その保険料の額については、4から6までに定めるところによる。
  2. 据置配当又は未収の契約者配当の額に付される利子の額については、その通知のあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるから留意する。

ポイント

契約者配当の金額は、原則としてその支払いに係る通知を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入すべきものです。但し、養老保険契約をしてその保険料を資産計上している場合には、受け取った契約者配当については、資産計上している保険積立金の額から控除して益金に算入しないことを認めています。

9. 長期の損害保険契約に係る支払保険料

法人が、保険期間が3年以上で、かつ、当該保険期間満了後に満期返戻金を支払う旨の定めのある損害保険契約(これに類する共済に係る契約を含む。以下12までにおいて「長期の損害保険契約」という。)について保険料(共済掛金を含む。以下12までにおいて同じ。)を支払った場合には、その支払った保険料の額のうち、積立保険料に相当する部分の金額は保険期間の満了又は保険契約の解除若しくは失効の時までは資産に計上するものとし、その他の部分の金額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。

※注)支払った保険料の額のうち、積立保険料に相当する部分の金額とその他の部分の金額との区分は、保険料払込案内書、保険証券添付書類等により区分されているところによる。

10. 賃借建物等を保険に付した場合の損害保険料

法人が賃借している建物等(役員又は使用人から賃借しているもので当該役員又は使用人に使用させているものを除く。)に係る長期の損害保険契約について保険料を支払った場合には、当該保険料については、次に掲げる区分に応じ、次による。

  1. 法人が保険契約者で、当該建物等の所有者が被保険者の場合 9による。
  2. 当該建物等の所有者が保険契約者及び被保険者の場合 保険料の全部を当該建物等の賃借料とする。

ポイント

火災保険契約は、自己所有の建物等を対象として自己が保険契約者及び被保険者になるケースと、他人所有の建物等を対象にして自己である法人が保険契約者、建物所有者である他人が被保険者であるケースがあります。後者の場合には、損害保険金の請求権は被保険者、満期返戻金、解約返戻金及び契約者配当金の請求権は保険契約者に存します。

11. 役員又は使用人の建物等を保険に付した場合の支払保険料

法人がその役員又は使用人の所有する建物等(10括弧書に該当する建物等を含む。)に係る長期の損害保険契約について保険料を支払った場合には、当該保険料については、次に掲げる区分に応じ、次による。

  1. 法人が保険契約者となり、当該役員又は使用人が被保険者となっている場合 保険料の額のうち、積立保険料に相当する部分の金額は資産に計上し、その他の部分の金額は当該役員又は使用人に対する給与とする。ただし、その他の部分の金額で所得税法上経済的な利益として課税されないものについて法人が給与として経理しない場合には、給与として取り扱わない。
  2. 当該役員又は使用人が保険契約者及び被保険者となっている場合 保険料の額の全部を当該役員又は使用人に対する給与とする。

12. 保険事故の発生による積立保険料の処理

法人が長期の損害保険契約につき資産に計上している積立保険料に相当する部分の金額は、保険事故の発生により保険金の支払を受けた場合においても、その支払により当該損害保険契約が失効しないときは損金の額に算入されない。