1. 改正前の退職所得の計算

(1) 退職所得とは

所得税法における10種類の所得のうち、「退職給与、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(「退職手当等」とします。)に係る所得をいいます。

(2) 退職所得の金額(所法30①)

(その年中の退職手当等の収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2

退職金は過去勤務に対する給与の精算金としての性格を有しているとともに、退職後の生計を立てるための一時金としての性格を有しています。そこで、退職所得の金額を計算する場合には、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を控除し、さらに最終的に「所得金額を一律に2分の1」する優遇措置を適用します。

退職所得控除額の計算は次の通りです。

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区分 退職所得控除額
一般的な退職 勤続年数20年以下 40万円×勤続年数(注1、2)
勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
障害者になったことに直接基因した退職 一般的な退職の計算金額+100万円

(注1) 勤続年数の1年未満の端数は切り上げます。
(注2) 勤続年数2年未満による計算結果80万円未満である場合には80万円とします。

(3) 退職所得に対する所得税額の計算

このように計算した退職所得に対しては、他の所得と分離して所得税率を乗じます。「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者に提出している場合には、原則として、源泉徴収により納税は終了します。提出していない場合には、20%の源泉所得税を徴収されたうえで確定申告が必要です。

2. 役員退職所得の課税方法の見直し

(1) 概要

勤続年数5年以内の法人役員等の退職金(特定役員退職手当等)については、一般従業員の退職金とは相当に異なる事情にあることを踏まえ、2分の1課税を廃止します。
近年、公的な職に就いている者が、定年退職後に特定の職場にて数年勤務の後に法外な退職金を受給するものの、2分の1課税によって相当額以上の税金が免除されることになります。いわゆる、”天下り”や”渡り”といわれる職をはしごすることによる経済的な法外な優遇を排除することを目的としてこの度の改正が執行されました。

(2) 特定役員退職手当等とは

退職手当等のうち、役員等勤続年数が5年以下である者が、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払いを受けるものをいいます。役員等勤続年数は、退職所得控除額の計算に係る勤続年数の計算の規定により計算した期間で、次の①~④に掲げる役員等として勤務した期間により計算します。

適用対象となる役員等の範囲
  1. 法人税法第2条第15号に規定する役員(注)
  2. 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
  3. 国家公務員
  4. 地方公務員

(注)「法人税法第2条第15号に規定する役員」の範囲の定義

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区分 法人の種類 判断基準
会社法上の役員 肩書で判定 同族会社
非同族会社
法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び精算人
1. 法人の使用人以外(例:相談役、顧問、会長、副会長等)の者であること
2. 法人の経営に従事している者であること
法人税法独自の役員 持株で判定 同族会社 1. 同族会社の使用人であること
2. 50%以上基準、10%超基準及び5%超基準の持株要件を満たすこと
3. 法人の経営に従事している者であること

※「特定役員退職手当等」に対して、以外の退職金を「一般退職手当等」と称します。

(3) 「特定役員退職手当等」と「一般退職手当等」が同一年中に支給された場合

(退職所得の金額の計算方法)
次の①と②の合計額とします。

  1. 特定役員退職手当等に係る退職所得の金額
    =その年中の特定役員退職手当等の収入金額 - 特定役員退職所得控除額 - (注)
    (注) 「一般退職手当等の収入金額」が「一般退職所得控除額」に満たない場合の満たない金額
  2. 一般退職手当等に係る退職所得の金額
    =(その年中の一般退職手当等の収入金額 - 一般退職所得控除額)× 1/2

(4) 「特定役員退職所得控除額」と「一般退職所得控除額」の計算方法

  1. 特定役員退職所得控除額(次のイとロの合計額とします。)
    イ.40万円 ×(特定役員等勤続年数 - 重複勤続年数)
    ロ.20万円 × 重複勤続年数
  2. 一般退職所得控除額
    =退職所得控除額 - 特定役員退職所得控除額(注)
    (注) 特定役員退職手当等の収入金額が、特定役員退職所得控除額に満たない場合には、その収入金額

(5) その年の前年以前4年以内に退職手当等の支払いを受けている場合

4年以内に重複している勤続期間がある場合には、退職所得控除額を重ねて適用することは出来ません。

(6) 適用関係

平成25年分の所得税及び平成25年1月1日以後の個人住民税について適用します。