Ⅰ 小規模企業共済制度に係る退職一時金(解約手当金である共済金)を受給する場合

1. 退職共済の種類 共済金

2. 給付金の請求事由は次のような場合です

● 法人が解散した場合
● 病気、怪我により役員を退任した場合
● 病気、怪我以外の理由により、または65歳未満で役員を退任した場合

3. 共済金の構成

● 共済金の額は、基本共済金と付加共済金の合計金額
● 基本共済金とは、掛金月額、掛金納付月数に応じて、共済事由ごとに定めている金額
● 付加共済金とは、毎年度の運用収入等に応じて、経済産業大臣が毎年度定める率で算定した金額

4. 税法上の取扱い … 退職所得と雑所得については次の通りです

● 共済金または準共済金を一括で受取る場合 – 退職所得扱い
● 共済金を分割で受け取る場合 – 公的年金等の雑所得扱い
● 共済金を一括、分割併用で受取る場合 – 一括は退職所得扱い
● 共済金を一括、分割併用で受取る場合 – 分割は公的年金等の雑所得扱い
● 共済金を遺族が受取る場合 – みなし相続財産
● 共済金を65歳以上の方が任意解約する場合 – 退職所得
● 共済金を65歳以上の共同経営者が任意退任する場合 – 退職所得
● 共済金を65歳未満の方が任意解約する場合 – 一時所得
● 共済金を65歳未満の共同経営者が任意退任する場合 – 一時所得

共済金(退職金)を受け取る時の税負担は軽い!

共済金の受取方法は、原則は一度に全額を受取る「一時金」方式ですが、法人が解散した場合、身体の障害・死亡・65歳以上で引退した場合は「一時金」方式と「年金」方式の選択が可能で、場合によっては「一時金」方式と「年金」方式の併用も可能です。
「一時金」方式は、退職金の受取りと同じなので「退職所得」として取扱うので、所得税の負担は軽くなり、他方、「年金」方式は、「退職所得」ではなく「雑所得(公的年金等)」として扱い、「公的年金等控除」が出来るので、同様に所得税の負担が軽くなります。

Ⅱ 退職所得控除額の計算

小規模企業共済に係る退職金(一時金)の給付を受ける場合には会社からの退職金と合わせて受給するケースがあります。同一年に2か所以上から退職金を受け取るとき、前年以前に退職金を受け取ったことがあるとき等は、控除額の計算が異なります。

1. 同一年に2か所以上から退職金を受けるとき

役員又は使用人に退職手当等を支払うとき、同じ年に既に他の会社等から退職手当等を支払われている場合、一つの会社の退職時に会社の他に企業年金基金等から退職手当等とみなす一時金の給付を受けることもあります。この様に、他の支払者からその年中に支払済の退職手当等がある場合には、支払者は他の支払者が支払った退職手当等も含めて、源泉徴収税額を計算します。
退職手当等の受給者は、支払時までに、支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しますが、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等がある場合は、申告書にその退職手当等の支払者の氏名(名称)、退職手当等の額、源泉徴収税額、支払年月日及び勤続年数等を記入し、「退職所得の源泉徴収票」を添付して提出します。複数の支払者に申告書を提出する場合には、申告書にその提出の順位を記載します。

退職手当等の支払者が、その年中に他の支払者から支払済の退職手当等が記載された退職所得の受給に関する申告書の提出を受けた場合には、次のとおり源泉徴収税額の算出を行います。

① 支払済の他の退職手当等の額と今回の退職手当等の額を合計し退職所得の収入金額とします。

② 支払済の他の退職手当等の勤続期間と今回の退職手当等の勤続期間のうち最も長い勤続期間により勤続年数を算出します。ただし、その最も長い期間以外の期間のうちにその最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その重複しない部分の期間を最も長い期間に加算して勤続年数を計算します。この勤続年数に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げます。

※ 退職所得控除額の計算期間 … a~bの期間

※ 退職所得控除額の計算期間 … a~bの期間

③ 上記②の勤続年数を基にして退職所得控除額を算出します。なお、勤続期間の年数に1年未満の端数を生じた場合にはこれを1年として勤続年数を計算します。(納税者有利)

2. 前年以前に退職金を受け取ったことがあるとき

前年以前4年間(確定拠出年金の老齢給付金を受給した年分は前年以前14年間)に他の支払者から支払われた退職手当等がある場合には、本年分の退職手当等の勤続期間と前年以前4年間に支払われた退職手当等の勤続期間とが重複する期間の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)に基づき計算した退職所得控除相当額を控除した残額が退職所得控除額になります。

※ 退職所得控除額の計算期間 … a~bの期間
退職時期が前年以前4年以内の場合には、重複期間は除く

※ 重複部分の期間に1年未満の端数を生じたときは、その端数を切り捨てます。(納税者有利)

前年4年内に他の退職金を受けている場合(控除不足がある場合)

前年以前4年以内に支払を受けた退職手当等の額が少額で、その退職手当等に係る退職所得控除額に満たない場合(控除不足がある場合)は、前の退職手当等に係る就業日から次の算式による年数(小数点以下の端数は切捨)の期間を重複期間とします。

※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。

前の退職手当の収入金額 算式
800万円以下の場合 収入金額÷40万円(1年未満切捨)
800万円超の場合 (収入金額-800万円)÷70万円+20年(1年未満切捨)

具体的には、次のように求めます。

※ 表のはみ出した部分はスクロールしてご覧ください。

① 本年の退職手当に係る勤続年数 10年(9年10月:1年未満切上)
② ①の退職所得控除額 400万円=40万円×10年
③ 前年以前4年間内の退職金130万円に係る年数 130万円÷40万円=3年(1年未満切捨)
④ ③の退職所得控除額 120万円=40万円×3年
⑤ 求める退職所得控除額 280万円=400万円-120万円
※ 別解280万円=40万円×(10年-3年)

3. 退職所得に係る税額の計算

退職所得の金額=(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)×1/2

1. 退職所得の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に2分の1を乗じて課税退職所得金額(千円未満切捨て)を算出

2. 退職所得控除額
● 勤続年数20年以下のケース:40万円×勤続年数
● 勤続年数20年超のケース:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※ 勤続年数は1年未満の端数切上

【退職所得に係る税金】
退職所得の金額に所得税の超過累進税率を乗じて計算します。分離課税のため、原則として源泉徴収によって納税は終了。

※ 退職手当等の収入金額のうち、役員等としての勤続年数が5年以下の者(特定役員等)が、役員等としての勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けたものについては、計算過程で2分の1にしません。計算式は次の通りです。

40万円×(特定役員等勤続年数-重複勤続年数)+20万円×重複勤続年数

※ 課税退職所得金額をもとにして、税額を算出します。税額から支払済の他の退職手当等の源泉徴収税額を控除して、今回の退職手当等の源泉徴収税額を算出します。なお、控除後の額がマイナスとなる場合には源泉徴収税額はないことになります。この場合、マイナスの金額の還付を受けるためには、退職手当等の受給者本人が確定申告を行う必要があります。

Yさんのケース

1. 小規模企業共済の給付金と会社退職金の関係

小規模企業共済の加入期間が15年(仮)で、(株)X社での勤続年数30年間(仮)に全てが含まれているとすると、退職所得控除額の計算は次の通りです。

● 小規模企業共済加入期間15年に対する退職所得控除額 40万円×15年=600万円
● 小規模企業共済の退職共済金の税金計算で使用した退職所得控除額 400万円・・・①
● (株)X社の勤続年数 30年に対する退職所得控除額
40万円×20年+70万円×10年=1,500万円・・・②
● この度の㈱X社の退職金に係る退職所得控除額は、②-①=1,100万円です。

A:(株)X社、B:小規模企業共済

つまり、小規模企業共済に係る退職共済金を平成30年中に給付を受け、㈱X社からの退職金を平成31年に給付を受けても、税金計算において有利不利は生じません。退職所得控除額の計算において、控除額の総額は通算して計算しますが、重複部分は除きます。また、4年以内の複数年にわたって退職金の給付を受けた場合には、控除額の総額から前年以前の控除額を控除した金額が、当年の退職所得控除額になります。
※ (株)Ⅹ社の退職金の給付の時期を平成30年から平成31年に遅らせることによって、在任期間が1年間延びるので、退職所得控除額を1年分増額させる効果は見込まれます。

2. 会社退職金の取扱い

(1)会社事業年度
事業年度の途中で株式会社が解散した場合の事業年度は、
解散事業年度①・・・事業年度開始の日から解散の日までを1事業年度、
解散事業年度②・・・解散の日の翌日から1年ごとの期間が1事業年度
※ 残余財産が確定した場合は、その事業年度開始の日から残余財産確定の日までを1事業年度(清算事業年度)とみなします。
解散の日とは、株主総会において解散の日を定めたときはその定めた日、解散の日を定めなかったときは解散決議を行った日になります。残余財産確定の日とは、債務弁済の完了日になります。

(2)株主への払戻しにおける「資本の払戻しと配当」
結論としては、資本等の金額に達するまでの金額は単なる資本の払戻しなので課税関係は所持ません。対して、資本等の金額を超える部分は配当所得として総合課税の対象になります。

(3)(2)の配当所得として課税される部分について退職金として給付して、節税する方法も可能です。なお、この場合には、配当所得としての払出しと、退職所得としての払出しとをシュミレーションして何れが有利かの判断が必要です。